緑内障
古くは「青ぞこひ」と呼ばれているもので、古来失明にいたる病気と恐れられて来ました。 一般には「急に目がこれまで体験したことが無いほどの激痛が起こり、眼科的処置が遅れると失明する」と言われてきましたが、緑内障発作を起こす高眼圧症例は限られており、最近では眼圧(眼球の固有の硬さ)が正常か、やや低めの緑内障(正常眼圧緑内障・低眼圧緑内障)が多く、成人病検査の項目の一つになっています。
角膜(黒目を覆う透明なドーム状の膜)から虹彩(瞳)までの空間を前房といい、ここには必ず体液(赤血球を除いた血液とほぼ同じ成分の体液)で満たされています。 この部分の水を前房水とい、前房水は虹彩の奥から産生され水晶体と瞳孔の間を流れて虹彩の前方に流れ込み、虹彩と角膜との空間(前房)を循環し角膜と虹彩の付け根から染み出して強膜(白目)に至り、強膜の静脈に流れ込み、眼球から離れて体内循環に入ります。 前房水の流れが詰まり気味になった状態が緑内障で、目の中の水分量が増加することで、眼圧が上がり圧力の逃げ場がなくなると眼球の外へ向かって圧が逃げようとします。 これにより「目が割れるように痛い」、さらに上昇すると「頭が割れるように痛い」となり、それでも放置すると「失明」することになりかねないのです。 緑内障は明らかな眼圧の上昇で網膜の視神経(物を見る神経)への栄養動脈の血流が停滞し、網膜動脈の血流が支配する視神経部分の視野が障害され、眼圧の降下処置をしないで放置していると網膜動脈還流域の視神経支配領域の視野の欠損(視野がなくなる:当然見えません)になります。 血流不全ですから、一度神経が死に絶えると二度と視野は回復しません。しかし網膜中央部はエネルギーを最後まで補われるので、なかなか視野欠損が起こっていることに気付かず(黄班回避:視野中央部は最後まで保たれる)、視野欠損・視野狭窄が急速に進行してしまい、眼科受診した頃には殆どの視野が無くなっているということがあります。 成人病としての日頃からの視力・視野検査は半年に1度位受けていても良いかもしれません。 点眼で初期の障害は維持可能です。
失明の原因としては今後、一層増えてゆくでしょうが予防法が無いので、早期発見・早期治療が肝心です。 何もなくても40代になれば自分で眼科検診を心がけてください。 緑内障はいわば、血管循環不全の一部であると認識して下さい。 そのため、緑内障の視野検査中に脳血管障害(症状の無い脳梗塞・これから始まるかもしれない脳梗塞や出血・脳腫瘍等)が発見されることもあり、眼科医は結果を受けて直ぐに脳神経外科を紹介してくれますので、さらに安心していただけると思います。
監修:藤原医院 院長:藤原憲治