気候変動によって起こる想定外の疾患に注意

先月末、私も髭をなんとか剃りましたが、今年からイネ花粉症に曝露した様で剃り後が赤く腫れて大変です。


現在ヒノキ花粉症が終了し一息ついているはずですが、5月連休明けの休診明けから本年は「イネ花粉症」に翻弄されています。鼻症状はともかく皮膚症状と平衡障害(めまい・耳鳴り・転倒等)が合併しており複数の医院を受診されても良く分からないと言う事で、たまたま来院されている方が目立ちます。通常の花粉症治療で軽減されますが、皮膚症状・平衡障害はなかなか改善が難しい症例が多いです。しかし他に意外な症例がおられましたので、記載します。「熱中症の初期」でした。元々イネ花粉症がある60代の患者さんでしたが、例年悪化するまで放置、「どうせ治らないから」だそうです。鼻症状と目の痒み・充血は「今年は5月中旬から出だしていて、例年になく早いな」とは感じておられた様です。台風が日本に接近しだした頃から、時々「めまい」が出たそうです。今回自宅の庭仕事を休日に行い、風呂場で汗を流していた際、回転性のめまいと耳鳴りに襲われ、御家族と共に来院されました。しかし眼振検査では明らかな「前庭障害(三半規管の障害)」を示す所見が無く、回転性とは言えむしろ自律神経系障害を疑わせる状態でした。なにより血圧が上下とも大変下がっており、先ず横になって貰い生食点滴を始めました。舌も乾ききっており角膜の光反射もやや鈍く、返答も曖昧でしたので、電解質バランスの問題と血流動態不全も関与するのではないかと判断しました。点滴を初めて5分ほどで自力で立ち上がり、「はぁー、楽になった。」と体を起こされました。花粉症以外の症状は消失し、めまい・耳鳴りは消失、毅然と歩行されるに至りました。聞けば、家族の反対の中「熱い風呂」が大好きで、シャワーも45度程度のお湯を使っておられた様です。当日は湿度が高く、蒸せる様な湿気の中、庭の雑草取りと剪定を午前中ずっと休みなく行っておられてと言う事です。高齢ではありませんし、庭仕事は慣れておられ、しかも高湿度での作業のため、御本人も御家族も「熱中症」は想定外であったと考えます。そのため単純に水分のみの補給では対応出来ず、塩分・ナトリウムの積極的補給で改善しました。よく間違われるのは、「日本茶やウーロン茶を夏場しょっちゅう飲んでいるから、熱中症(日射病)予防は十分している」とおっしゃる方がいらっしゃいますが、残念ながら無理です。太陽光による皮膚からの発汗で多くのヒトは当初ベタベタした汗をかき始め、しばらくすると体が夏に慣れ出してサラサラした汗をかく様になります。つまり「ベタベタ汗」は塩分(ナトリウム)が多く汗に出ており、「サラサラ汗」は塩分の体内への再吸収が進み塩分流出が少なくなった状態です。本格的な夏に体が順応していない現在、汗への塩分(ナトリウム)の漏出が多く、水分のみの補給では血液中の塩分濃度が一層低下してしまい、好ましい血液循環が出来なくなります。その一症状が「めまい・耳鳴り」であった訳です。ここでも本人と家族への問診が肝心です。日常の患者さんの生活習慣を把握する事で、たまたま把握できた事が解決への近道になりました。


実際時折、救命救急専門医である事への感謝を実感します。しかし多くの患者さんは「そんな大層な・・・」と考えてしまいがちです。しかも気候変動は我々の想像や予知力を遥かに凌いでいます。花粉症も季節感が無くなって来ている昨今、春と秋の区別が付きにくくなり雑草を中心とした花粉症が幅を利かせる様に成るかもしれません。さらに全く想定外の疾患も視野に入れないといけなくなり、専門医制度自体が役立たずになる事も考えられます。つまりは国家が想定している「総合的診療の普及(総合診療科を含む)」に対して、医学会が今も拘り続ける「専門医の普及」との大きなギャップを感じざるを得ません。

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