スギ花粉の減感作療法

最近、倫理や常識に関するブログが多いと考えまして、少し学術的な内容に戻そうと思います。特に当院での特徴に当たる「スギ花粉舌下免疫療法」について御質問が多いので、触れてみます。

 免疫は生物に於いて、極めて綿密に組み立てられた「自己防御システム」です。特に「自己」を正確認識し、自己を脅かすモノ「非自己」を除外廃絶する精密なシステムです。非自己すなわちウイルス・細菌・無機物・有機物は当然、ガン細胞(全て抗原と認識されます)も丁寧に認識し様々な細胞系と抗体系で自己=自分の体を的確に速やかに排除する防御システムです。しかしアレルギーはこの優れた防御システム「免疫」の暴走状況と言えます。免疫は全身防衛を的確に行うシークレットサービス・警察ですが、過剰防衛に至ってしまう輩状況を「アレルギー」と考えて下さい。つまり正規軍で合った筈の組織が、自己判断で過剰な攻撃を免疫系の指示を無視して暴走している自警団・暴徒の状態と考えて下さい。彼等は良かれと判断した行為行動が、行き過ぎ・過剰反応となって自己=自分の体も非自己と判断し攻撃してしまう状況です。その為、治療としては「抗アレルギー剤・ステロイド剤による免疫抑制・痒み腫れ痛みの局所症状回避のための消炎剤」を使用します。多くの患者さんは「発症してから治療を開始する」事が一般的であり、当院では予防治療を希望して来院する方が多く居られます。その中でも「自己の体質を改変(改善:自己にとっては好ましい事)する予防を含む根本的治療法」を切望される患者さんも多々居られます。そう言った発症を回避したいと言う積極的治療法として「減感作療法」の一部として「スギ花粉舌下免疫療法」が昨年秋に保険適応と成りました。この方法はある意味、インフルエンザの「予防接種」と同じ発想です。予防接種は「インフルエンザ・ウイルスの活動力を弱めたウイルスをヒトに発症しない程度の濃度に薄めた卵白で培養した液を皮膚の間(皮下注射)に注射して、「軽度のインフルエンザ罹患状態(軽いインフルエンザ感染状態)」を人工的に作り出す事です。減感作療法は「目的と成るアレルゲンをアレルギーを発症しない程度の濃度にまで薄めた原液を作成し、ヒトに与えて目的と成るアレルゲンに対する過剰反応をしない様に免疫反応のレベルを下げて、日常活動にアレルギー治療を行わなくても良い状態を獲得する様な治療法」と考えて下さい。その中で、現在「スギ花粉」に対する免疫療法が確定し、保険適応として国が認めた治療法です。

 

 しかし誠に残念ながら、今からでは「スギ花粉舌下免疫療法」は施行出来ない時期に入りました。少なくともスギ花粉飛散迄に出来れば3カ月程度前に予備治療から開始する必要があるからです。予備治療は「果たしてスギ花粉治療原液が患者さんに安全に対応するかどうか」を確認し、微量づつカリキュラムに従いスギ花粉治療原液の濃度を上げて行き、一定濃度に達してからは定期検査を行いながら毎日舌の裏に原液を滴下する日々の治療をおよそ2年以上行い、かつ治療に不可欠な一定濃度になるまでの3カ月間をスギ花粉飛散時期を迎えるまでに完了しなければ、舌下滴下スギ花粉アレルゲンと飛散しだしたスギアレルゲンが同時に患者さんの体内に取り込まれる事になり、スギ花粉アレルゲンの過剰摂取になるので、1月中旬では危険域に入ったと私は判断します。事実私は来週から抗アレルギー剤の内服を主治医と相談の上、例年の様に開始します。以前ブログに記載しましたが、私は10年以上前にかつて自費診療で「スギ花粉の減感作療法」を行いましたが、反応が無く、中止したからです。本治療法を希望される方は、今から「薬剤による本年度の治療を開始し、スギ花粉症が終了した状態を確認し、早々に舌下免疫療法を梅雨時には開始する」スケジュールをお勧めしています。出来れば「薬剤の効果と副作用、実際の症状について実際診察して於かないと十分な治療効果を判断しかねる」と希望患者さんに説明しています。一昨年から毎年経過観察を把握できている患者さんであれば、今年の梅雨時から舌下免疫療法の対象に成る可能性は高いと判断でき得ます。

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