斜位

 高齢者の白内障・緑内障が重要な疾患である事は当然ですが、斜位が視力障害の大きな要因である事が見逃されている事が気に成ります。

 視力が問題無いという方は、眼科受診歴が根本的にない筈です。その為高齢になり、家族の勧めや本人が腹を括って眼科受診された症例では、先ず「老眼」の診断だけでがっかり落ち込んで居られるので、解説が大変です。ましてや極僅かな眼球の位置異常等の指摘をしましても、理解の範囲を大きく逸れてしまいます。つまり多くのヒトは本来多少「外斜位」です。「外斜視」であれば元々の眼球の位置異常が他人から見てもご本人も予め理解して居られます。しかし「斜位」というのは「意識して見ようとすると元々の眼球の位置のズレを自動制御してしまい、特には不都合を感じない程度の状態」とでも解説致しましょう。つまり自分でも鏡を見て目の位置が外を向いている、或いは内側を向いているという事が判明する状態が「斜視」であり、左右の眼球の焦点が別々の位置を見ているのできちんと立体視が出来辛い、また両眼で見た場合ブレて見える(両眼視複視)状態を言います。つまり正常の焦点確保に対し、かつ視力確保の為に必要であれば「手術的手法」を選択せざる得ない状態でもあります。一方「斜位」は自分の努力である程度両眼視に問題が生じない為、一般的な眼科検査では判明しない事が多いです。小児や高齢者では、自力での焦点確保が難しい為に、「眼精疲労」や「視力矯正不全」や「立体視不全・両眼視複視」が明らかになってしまうのです。成人では症例が少ないのは、自己矯正が可能である症例が殆どだからです。しかしコンピューターを中心とした近見視力重視で一日中のデスクワークが主体な職業にある方は、VDT症候群と呼ばれ産業医学分野で大変重要な障害を招きかねない状態です。高齢者でも仕事だけでなく趣味においてもパソコンを多様化する方が急増するため、VDT症候群様障害が顕著化していると推察されます。その為「斜位」が最近問題になって来ていると推察します。

 手術する程の問題では無く、むしろ手術等を行った場合後遺症が生じかねませんので、斜視でないならば現状を維持しながら点眼や内服を加えながら眼筋ストレッチ等と姿勢の保全で急速に改善する症例は思いの外多いです。実際高齢の患者さんでポーツクラブに通ったりされて居た場合、「少し追加でストレッチをされる事で大幅に状況改善しますよ」と丁寧に解説する事で改善の切っ掛けを掴まれて主訴が改善する患者さんが多々居られます。その後白内障や緑内障の治療も同時に必要と症状に応じて行っています。

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